学際バリアフリー研究ワークショップ 第3回「恋する」 - 東京大学先端科学技術研究センター

昨日はこちらのワークショップに参加してきました。

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東京大学先端科学技術研究センター 学際バリアフリー研究ワークショップ
Hybridianの時代〜人とテクノロジーの融合が生み出す新しい能力をどう評価すべきか?
第3回「恋する」

話題提供者:
加藤晴明中京大学 社会学部教授)
飯野由里子(東京農工大学 非常勤講師)

コメンテイター:
室田尚子(早稲田大学 非常勤講師)

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まず飯野由里子さん(東京農工大学 非常勤講師)のお話。
セクシャル・マイノリティであるレズビアンを題材に、
歴史から現在のレズビアンという存在が、
どのようにどのような環境で育まれてきたか?
という内容が、
IT技術の変遷を通して語られていて理解が容易になっていました。
雑誌の文通欄、パソコン通信、電子メールから、
常時接続のインターネットへ。
レズビアンアイデンティティの構築が、
以前よりも容易になった可能性について語られていて、
その内容はとても興味深いものでした。

次のステップとして僕の頭の中に出てきたのが、
セクシャル・マイノリティ市場をターゲットとしたマーケティング
海外(アメリカなど)ではセクシャル・マイノリティの市場価値が認められ、
ブリーフのCMに裸体の男性を2人登場させ、
セクシャル・マイノリティを連想させるなど、
セクシャル・マイノリティ市場へのアプローチが見受けられます。
企業が与える個人への影響は大きいですからね。
先進国の事例にも気を付けたいと思います。


次に加藤晴明さん(中京大学 社会学部教授)のお話。
Part1.解放の装置としてのメディア
Part2.「出会い装置」としてのメディア
Part3.自己物語のリライト装置としてのメディア
という三部構成のお話は、
メディア社会の進歩が人に何をもたらしてきたかを、
メディア社会学の視点で説明されていて興味深かったです。
僕自身がメディアのユーザーで、
メディアを作り出す仕事をしていたのもあり、
普段考えていることのまとめになって良かったです。

お話の中で興味深かったキーワード。

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CMC:コンピュータを介したコミュニケーション

メディア・マジック:メディアは両義的な側面を持っていて、自己の解放をもたらすとともに、自己の肥大化/他者の縮小や他社のアイテム化を生む

メディアには「マジカルな要素=妄想・幻想」が宿命としてついてまわる。

メディアは欲望を生み出すわけではない。しかし、私たちの欲望をより、肥大化されていくもの。

「インティメイト・ステレンジャー」(富田英典)
「匿名性」と「親密性」の奇妙な結婚、通りすがりの他者との親密な関係

メディア・ドラマトゥルギー:自己物語のリライト

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この辺りはある程度のメディアリテラシーを持った人であれば、
形式化されて頭で理解していると思うんですけどね。

オンラインゲームや大勢の人が見るWEBサイトを作っている時に、
この辺りを暗黙知で語って済ませている人が多くて、
危機感を覚えたのを思い出しました。


最後に室田尚子さん(早稲田大学 非常勤講師)のお話。
室田さんは自身がネットを使った恋愛の体験者で、
そのお話は生々しくて面白かったです。
僕も過去にネットを使った恋愛の経験があって、
過去を思い出しながらお話を聞いていて、
似た価値観に触れられて良かったです。

アウトプットもインプットも個々人が自ら行うもので、
そこには少なからず温度差が生じる。
捉え方を誤れば問題となることもあるし、
過大評価されることも過小評価されることもある。
こちらもメディアリテラシーに依存する訳ですが。

室田さんのお話は特別に面白く感じたので、
帰りがけにその著書を購入させて頂きました。
「チャット恋愛学」PHP研究所

またお話したいな・・・。


「恋する」というテーマが掲げられた際に、
僕はセックスボランティア(障害者の性の介助)についても触れるのかな?
と考えていました。
その辺りを先端研の知人に聞いていたら、
扱う話も出ていたようだけど、
最終的には理論や歴史を優先させた内容になったそうな。
確かに今回のワークショップに参加してみると、
セックスボランティアの内容はちょっと畑が違うように感じましたし。
セックスボランティアに興味のある方は、
こちらの本を読んでみてください。
セックスボランティア」新潮社
セックスという共通言語で障害者の性が書かれていて、
障害者の理解が促進されます。
同時に健常者がいかに恵まれているかという理解にも繋がる良書です。


うむ。
良い頭の中の整理になった。
しかしこの内容を子どもに理解させるのは・・・。
難しいですよね。
大人でも理解している人少なそうなのに。

ご興味ある方向けですが、
前回は「働く」というテーマでワークショップが開かれてました。
その時の日記はこちら。
「JAZZライブ(弦楽四重奏)と学際バリアフリー研究ワークショップ」